地域のこと

言い出したのは、妻でした。

髙須竜也 2026.08.15 ☕ 約4分で読めます

道に落ちているゴミの大半が、タバコだと知っていますか。

僕は知りませんでした。拾い始めるまでは。

月に2回、家族で地域清掃をしています。始めたのは今年の4月ですから、まだ4か月目です。偉そうなことを言える段階ではありません。

ただ、4か月拾っただけでも、街が少し読めるようになりました。

これが、思っていたよりずっと面白い。

言い出したのは、妻でした

そもそも、始めようと言ったのは僕ではありません。

妻でした。

自分たちが住んでいる街なのに、こんなに汚いのはありえない。

正直、最初はピンときていませんでした。毎日通っている道です。汚いと思ったことが、一度もなかった。

でも、言われてから見るようになったんです。

そうしたら、確かに汚い。

汚くなかったのではなく、僕が見ていなかっただけでした。

この「言われるまで見えない」という感覚には、覚えがあります。現場でも同じことが起きる。指摘されるまで気づかない納まりというのが必ずあって、一度指摘されると、その後は嫌でも目に入るようになる。あれと同じでした。

見え方が変わると、毎日通っていた道が、違う顔になります。

拾っていると、街が読めてくる

拾い始めて、すぐに分かったことがあります。

ダントツで多いのは、タバコです。空き缶でもペットボトルでもない。吸い殻と、空になった箱。

なぜ、こんなに落ちているのか。

拾いながら、考えます。

たぶん、吸う場所がないんだろうな、と。だから車の中で吸って、そのまま外に捨てる。そう考えると、量にも、落ちている場所にも、説明がついてしまう。

その人を責めたいわけではありません。ただ、拾っている側からは、そう見えるというだけです。

落ちているものから、そこで何が起きたかを逆算する。これが、けっこう面白いんです。

ゴミは、正直です。誰も見ていないと思っている場所ほど、その街のことが出る。

トングを持って歩いているだけなのに、街の内側を覗いているような感覚になります。

その日だけは、面白がれませんでした

一度だけ、手が止まったことがあります。

車で走っていたときです。助手席の妻が言いました。

あれ、生体が入っているゴミじゃないの。

見に行きました。

ケージでした。マジックで、「オス」と書いてありました。

中身は、いませんでした。

ただ、干し草とペットシーツが、入ったままでした。

直前まで、そこで何かが生きていた。その状態のまま、置かれていたということです。

車を止めました。周りにウサギがいないか、ぐるっと探しました。見つかりませんでした。

ケージは、車に積んで持ち帰りました。

その日に拾ったものの中で、あれだけは、ゴミではありませんでした。

子供たちは、まだ何とも思っていません

一緒に拾っている子供たちは、正直、まだ何とも思っていないと思います。

拾いながら、たぶん別のことを考えている。

でも、それでいいと思っています。

今は自分のことだけ一生懸命やってればいい。僕らも自分のこと、一生懸命やってるんで。

いつか大きくなったときに、記憶が少しでも残っていて、彼ら彼女らも自分から取り組んでくれたら。それで、町をきれいにする人が3人増えます。

そのくらいの気の長さで、いいと思っています。

「高須家」として、届け出ています

ひとつ、書いておきたいことがあります。

勝手にやっているわけではありません。「高須家」という名前で、藤沢市に届け出て活動しています。

登録が今年の3月。実際に活動を始めたのが4月です。

届け出をしたのは、格好をつけたかったからではありません。逃げ道をなくしたかったからです。

気が向いたときに拾うのと、届け出て月2回と決めてやるのとでは、続く確率がまったく違う。工程に入っていないものは、だいたい後回しになります。現場でも、そうです。

まだ4か月です

ここまで書いておいてなんですが、僕らがやっていることは、まだその程度です。

月に2回、住んでいる街のゴミを拾っている。それだけです。地域に貢献してきた、なんて言えることは、何ひとつしていません。

ただ、始める前の僕は、あの道が汚いことにすら気づいていませんでした。

今は、気づきます。

拾えるものが増えたというより、見えるものが増えた。4か月で手に入ったのは、たぶんそっちです。

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髙須竜也(株式会社高須工房 代表取締役)
髙須竜也
株式会社高須工房 代表取締役
ゼネコンで16年、現場所長まで務めてから独立しました。横浜を拠点に、RC造・S造の新築と、工場・医療施設の大規模改修、住宅・店舗のリノベーションを手がけています。木造はやりません。やったことがないので。10年で100億。この数字を追うのは、子供の未来支援・動物福祉・地域美化に回すお金と時間をつくるためです。月2回の地域清掃も、元野良4匹との暮らしも、その延長線上にあります。好きなものは、ハーレーとラングラー。あとは激辛とホッピーとケバブ。

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