道に落ちているゴミの大半が、タバコだと知っていますか。
僕は知りませんでした。拾い始めるまでは。
月に2回、家族で地域清掃をしています。始めたのは今年の4月ですから、まだ4か月目です。偉そうなことを言える段階ではありません。
ただ、4か月拾っただけでも、街が少し読めるようになりました。
これが、思っていたよりずっと面白い。
言い出したのは、妻でした
そもそも、始めようと言ったのは僕ではありません。
妻でした。
自分たちが住んでいる街なのに、こんなに汚いのはありえない。
正直、最初はピンときていませんでした。毎日通っている道です。汚いと思ったことが、一度もなかった。
でも、言われてから見るようになったんです。
そうしたら、確かに汚い。
汚くなかったのではなく、僕が見ていなかっただけでした。
この「言われるまで見えない」という感覚には、覚えがあります。現場でも同じことが起きる。指摘されるまで気づかない納まりというのが必ずあって、一度指摘されると、その後は嫌でも目に入るようになる。あれと同じでした。
見え方が変わると、毎日通っていた道が、違う顔になります。
拾っていると、街が読めてくる
拾い始めて、すぐに分かったことがあります。
ダントツで多いのは、タバコです。空き缶でもペットボトルでもない。吸い殻と、空になった箱。
なぜ、こんなに落ちているのか。
拾いながら、考えます。
たぶん、吸う場所がないんだろうな、と。だから車の中で吸って、そのまま外に捨てる。そう考えると、量にも、落ちている場所にも、説明がついてしまう。
その人を責めたいわけではありません。ただ、拾っている側からは、そう見えるというだけです。
落ちているものから、そこで何が起きたかを逆算する。これが、けっこう面白いんです。
ゴミは、正直です。誰も見ていないと思っている場所ほど、その街のことが出る。
トングを持って歩いているだけなのに、街の内側を覗いているような感覚になります。
その日だけは、面白がれませんでした
一度だけ、手が止まったことがあります。
車で走っていたときです。助手席の妻が言いました。
あれ、生体が入っているゴミじゃないの。
見に行きました。
ケージでした。マジックで、「オス」と書いてありました。
中身は、いませんでした。
ただ、干し草とペットシーツが、入ったままでした。
直前まで、そこで何かが生きていた。その状態のまま、置かれていたということです。
車を止めました。周りにウサギがいないか、ぐるっと探しました。見つかりませんでした。
ケージは、車に積んで持ち帰りました。
その日に拾ったものの中で、あれだけは、ゴミではありませんでした。
子供たちは、まだ何とも思っていません
一緒に拾っている子供たちは、正直、まだ何とも思っていないと思います。
拾いながら、たぶん別のことを考えている。
でも、それでいいと思っています。
今は自分のことだけ一生懸命やってればいい。僕らも自分のこと、一生懸命やってるんで。
いつか大きくなったときに、記憶が少しでも残っていて、彼ら彼女らも自分から取り組んでくれたら。それで、町をきれいにする人が3人増えます。
そのくらいの気の長さで、いいと思っています。
「高須家」として、届け出ています
ひとつ、書いておきたいことがあります。
勝手にやっているわけではありません。「高須家」という名前で、藤沢市に届け出て活動しています。
登録が今年の3月。実際に活動を始めたのが4月です。
届け出をしたのは、格好をつけたかったからではありません。逃げ道をなくしたかったからです。
気が向いたときに拾うのと、届け出て月2回と決めてやるのとでは、続く確率がまったく違う。工程に入っていないものは、だいたい後回しになります。現場でも、そうです。
まだ4か月です
ここまで書いておいてなんですが、僕らがやっていることは、まだその程度です。
月に2回、住んでいる街のゴミを拾っている。それだけです。地域に貢献してきた、なんて言えることは、何ひとつしていません。
ただ、始める前の僕は、あの道が汚いことにすら気づいていませんでした。
今は、気づきます。
拾えるものが増えたというより、見えるものが増えた。4か月で手に入ったのは、たぶんそっちです。